2007/ 4/ 9

平成18年度 家畜輸出入に関するセミナー 要旨

 「平成18年度 家畜輸出入に関するセミナー」が、平成19年3月20日(火)13時30分から、森永プラザビル (東京都港区。場所詳細:Yahoo-Map) にて
行なわれました。

家畜衛生をめぐる内外の情勢
農林水産省 消費・安全局 動物衛生課 課長補佐 林 様
<www.maff.go.jp/syouan/index.html>
林 様

動物検疫分野における危険度分析

 − 動物衛生分野におけるリスク分析及び国際基準の概要

農林水産省 動物検疫所 精密検査部 危険度分析課長 鎌川 様
<www.maff.go.jp/aqs/>
鎌川 様
牛海綿状脳症(BSE)研究に関する最新の知見について
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 プリオン病研究センター
プリオン病研究チーム長 横山 様
<niah.naro.affrc.go.jp/>
横山 様


概要

1.リスクとは何か

  • 被害,損失,損害に直面する見込み(likelihood)及び機会(chance)
  • 輸入リスク分析におけるリスク(単なる可能性の有無を調べるのではない)
  • リスクが有する2つの構成要素
     確率 : 事象(event)が起こる見込み(probability)
     結果 : それが起きた場合に起こりうる影響及びその重大性又は深刻性(magnitude or seriousness))

2.リスク分析とは何か

  • 措置の決定を導き出すことを目的として構築された考え方
     何が好ましくない事態をもたらすのか? 悪くなる見込みはどの程度なのか?
     それによる影響はどうか? 見込みや影響を軽減するために何ができるのか?
  • 日常生活でも自然に行なっている
  • 不確定な事項を処理する1つの手法

3.リスク分析はいつ頃から始まったか

本格的な整備:1994年に締結されたWTO/SPS協定が1995年1月より発効されたことに伴い,
OIE基準(国際基準)の認知,リスク分析に基づく衛生植物検疫措置の重要性が注目され,それ以降
国際基準の本格的な整備にOIEコードが着手

4.なぜ動物検疫措置においてリスク分析が必要なのか

  • 家畜伝染病の侵入回避
  • 科学的正当性の確保
  • 必要な限度における動物衛生措置の履行


  •     ↓↓↓
    国際的義務の遂行

    5.リスク分析の国際貿易上の利点

    時刻の検疫措置の正当性を論理的に説明することを可能にし,動物衛生措置の重要性の認識及び
    信頼性の向上に寄与(透明性の確保)

        ↓↓↓
    貿易摩擦の緩和

    WTO/SPS協定
    図1

    1.世界貿易機関(WTO)(※図1)

    ウルグアイ・ラウンドが1994年に締結され,ガットを拡大発展させる形での
    新たな貿易ルールの作成及び当該ルールを運営する国際機関(WTO)の
    設立を決定。
    1995年1月1日に「衛生植物検疫措置の適用に関する協定」(SPS協定)を含む
    「WTOを設立するマラケシュ協定」(WTO協定)が発効。

    2.SPS協定におけるリスク評価の位置づけ

    リスク評価は,輸入において,自国の検疫措置の決定を行なう際の手段

    3.SPS協定(その1)

    第三条 措置の調和

    1 国際的な基準,指針又は勧告がある場合には,それに従った動物検疫措置をとる。…
    3 加盟国は,科学的に正当な理由がある場合又は当該加盟国が第五条の1から8までの関連規準に従い
      自国の動物検疫上の適切な保護の水準を決定した場合には,国際基準よりも高い保護水準を導入し又は
      維持することができる(注)。…

    4.WTO/SPS協定(その2)

    第五条 リスク評価及び適正保護水準の決定

    1 国際機関が作成したリスク評価法を考慮し,自国の動物検疫措置を,リスクの評価に基づき行なう。…
    4 適正保護水準の決定の際は,貿易に対する悪影響を最小限にするという目的を考慮…

    OIE(国際獣疫事務局)

    1.OIEの概要

    本部:フランス・パリ
    設立年月日:1924年1月25日
    加盟国数:167カ国(2006年5月現在)
    我が国との関係:
    日本の加盟:1930年1月28日
    図2:国際委員会

    2.OIEの国際的な位置づけ

    WTO(世界貿易機構)の設立とともに,SPS協定が発効され,OIEは,
    SPS協定の下,動物衛生分野の国際基準を策定する国際機関と認定

    ●国際委員会(※図2)

    3.OIEの主な活動内容

    1. 国際貿易上重要な動物疾病を規定し,国際動物衛生に関する国際基準等を策定
    2. 世界の動物伝染病の発生状況等の情報を収集・提供
    3. 動物疾病のサーベイランス及び防疫に関する調査・研究の国際レベルでの調整   など
    図3:OIE CODE and MANUAL

    4.OIEの規定する国際基準(※図3)

    陸生動物衛生規約(Terrestrial Animal Health Code)
    http://www.oie.int/eng/normes/mcode/en_sommaire.htm

    陸生動物の診断テスト及びワクチンマニュアル
    (Manual of Diagnostic Tests and Vaccines for Terrestrial Animals)
    http://www.oie.int/eng/normes/mmanual/A_summry.htm

    水棲動物衛生規約(Aquatic Animal Health Code)
    http://www.oie.int/eng/normes/fcode/en_sommaire.htm

    水棲動物の診断テストマニュアル(Manual of Diagnostic Tests for Aquatic Animals)
    http://www.oie.int/eng/normes/fmanual/A_summry.htm

    5.国際基準の更新(※図4)

    OIEでは,毎年5月に国際委員会(OIE総会)を開催し,加盟国間で事務局長より提出されたコード改正
    原案について協議し,コード改正を決定する。

    6.OIEレファレンス・ラボラトリー指定 日本人専門家

    (2006年12月現在)
    牛海綿状脳症横山 隆 博士(独)動物衛生研究所
    豚コレラ山田 俊治 博士(独)動物衛生研究所
    高病原性鳥インフルエンザ喜田 宏 教授北海道大学
    エキノコッカス感染症神谷 正男 教授酪農学園大学
    馬伝染性貧血村上 賢二 博士(独)動物衛生研究所
    馬ウイルス性動脈炎近藤 高志 博士中央競馬会
    OMV病吉水 守 教授北海道大学
    ウイルス性脳炎・網膜症中井 敏博 教授広島大学
    養殖マダイのイリドウイルス病中島 員洋 博士水産総合研究センター


    意志決定

    1.意志決定の背景

    ・原理原則(科学的客観性,透明性,一貫性,「ゼロリスク」は存在しない)
    ・国内における責務(バイオセキュリティ/動物検疫関係法規等)
    ・国際的責務(WTO・SPS協定,OIEコード)

    2.リスク分析結果を輸入条件設定にどのように活用するか

    輸入条件の決定は,リスク評価結果の他にも,輸入国の考慮している適正な保護水準への配慮,
    実用性等
    を考慮して決定
    ↓↓↓

    リスク評価の結果は,意志決定の補助材料であり,措置の決定を下す際の重要な基礎となる

    輸入リスク分析の実施

    1.要求される技能

    • 分析能力及びプロセスが重要
      一連の様々な専門的能力が必要なので,場合によっては複数の専門分野を賄うプロジェクトチームで取り組むことがベスト
       ・リスク分析者
       ・疫学者,ウイルス学者,寄生虫学者,経済学者
    • 先ず始めに,問題を特定する
      ■物品
      ・ 貿易物品は何か?
      ・ 通常行なわれている生産・加工方法は?
      ・ 生鮮肉? 加工肉?
      ■由来
      ・ 1国からの輸入?
      ・ 国の一部(地域)?
      ・ 多くの国からの輸入?
      ■輸入国における用途
      ■貿易量(可能であれば)

    3.リスク分析の際に,他に考慮すべき要素

     ・ 獣医組織の評価
     ・ 動物衛生のためのサーベイランスとモニタリング等

    4.輸入リスク分析を実施する場合

    • 国際的な基準がない
    • 国際的な基準が満足できるものではない
    • リスクが許容できるかできないかが明確に理解されていない
    • 新たな科学的知見情報が入手できるようになった

    5.輸入リスク分析を実施しない場合

    • ハザードが特定できない
    • 満足できる国際基準がある
    • 貿易相手国との間に,起こりうるリスクに関する広範な合意がある
    • 物品それ自体の特性が輸入国の要求する保護水準に合致している

    輸入リスク分析

    6.輸入リスク分析(IRA)

    • リスク分析の中の1つの特化した利用法
    • 目的:客観性と透明性をもって輸入品に関係する疾病リスクを分析
       ・ 病原体の伝播の回避
       ・ 輸入措置の科学的正当性の証明
       ・ 必要限度の貿易規制
    • 輸入国と輸出国にとって重要
    図5:輸入リスク分析の構成要素

    7.輸入リスク分析の構成要素(※図5)




    8.原則

    • 定性的,定量的アプローチ
    • 合理的かつ論理的考察
    • 矛盾のない方法(一貫した手法)
    • 包括的な文書作成(報告書の準備)
       ・ 使用された情報
       ・ 仮定と不確実性
    • 同分野の専門家による評価(peer review)

    9.評価手法(Approach)

    定性的アプローチ
    ・ 報告書(説明的)形式
    ・ 結論は量的な文言で表現(例:高い,中程度,低い,無視できる)
    定量的アプローチ
    ・ 数学的な定理,分布等を利用し,具体的な数値で確率を示す
    ・ データによるが,必ずしもより緻密である必要はなく,あるもので計算

    10.リスク分析に要求されること

     ・ 加盟国が侵入,定着,拡大を防ぎたいハザードを特定
     ・ これらのハザードの侵入,定着,拡大の見込みと生物学的, 経済学的な影響を評価
     ・ リスクを受け入れ可能なレベルに低減するための措置に従った場合のハザードの侵入,
      定着,拡大の見込みを評価

    ハザードの特定
    図6:輸入リスク分析の構成要素

    1.輸入リスク分析の4つの構成要素(※図6)





    2.ハザードの特定

     ・ ハザード:物品の輸入に伴い,生物学的,環境学的,経済学的に悪影響をもたらすもの
     ・ 全ての病原体を特定すること
     ・ 輸入リスク分析は,1つのハザードに特有の基礎的知見に基づき,リスクを処理しなければならない

    リスク評価
    輸入リスク分析は,4つのプロセスから構成される。
    1. 侵入評価
    2. 暴露評価
    3. 影響評価
    4. リスクの推定

    JLTA 事務局から
    動物検疫所は、 動物検疫所WEBサイトにて各種情報を公開しています。