2007/ 4/ 9
平成18年度 家畜輸出入に関するセミナー 要旨
「平成18年度 家畜輸出入に関するセミナー」が、平成19年3月20日(火)13時30分から、森永プラザビル
(東京都港区。場所詳細:Yahoo-Map)
にて
行なわれました。
1.BSE(牛海綿状脳症)とは
- 脳に異常タンパクが蓄積して、神経細胞が死滅
- 治療法、予防法はなく、長い経過の後に動物は死に至る
- 人に感染し、変異型ヤコブ病を起こす
2.BSEの特徴
- 中枢神経系が冒されることによる神経症状(行動異常、不安、過敏症)
- 経過が長い病気で、感染後もすぐに発症しない
- 中枢神経系に異常タンパク質が蓄積して発症
- BSEプリオンに汚染された動物性タンパク質飼料(肉骨粉など)が汚染源
- 現在のところ、応用可能な "牛のと殺前の検査法" は存在しない
3.異常プリオンタンパク質の構造に関する研究 (※図1)
4."プリオン" : 遺伝子を持たない病原体 (※図2)
- BSEの原因はプリオンと呼ばれる病原体。異常タンパク質(PrPSc)が主要な構成成分
- PrPScは、動物の持つ正常プリオンタンパク質(PrPC)の構造異性体
- PrPCは、動物・人の遺伝子によって作られる。PrPCだけでは、病気を起こさない
5.我が国のBSE検査体制 (※図3)
6.牛の間でのBSEの広がり
-
牛は草を食べる動物-
沢山の乳が出るようにしたい、早く大きく育てたい-
高タンパク質の安い飼料を食べさせて早く育てよう-
安価な飼料として、牛や羊のくず肉(人の食用肉の残り)から作った
飼料・肉骨粉を利用 → 牛の共食い
BSE牛から作られた飼料によって、感染が拡大
7.各国の国産牛でBSEが初めて確認された年 (※図4,5)
-
■JLTA 事務局から■
最新(1989年~)の報告数は、
疾病情報-世界のBSE発生状況 (動物衛生研究所) にて 更新されています。
8.人の変異型ヤコブ病
- BSEの牛を食べて、人がBSEプリオンに感染
- 変異型ヤコブ病は不治の病、患者は長い潜伏期の後に死亡
- 人では、輸血により感染する危険性。感染しても、発病するまで分からない
- 国内で、英国滞在歴のある人の変異型ヤコブ病患者が確認
- 英国、フランスに滞在歴のある人の輸血禁止
9.我が国のBSE対策 (※図6)
10.我が国の家畜飼養頭数と、動物プリオン病の発生数
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BSE : 2001年に我が国で初発。現在までに32頭(32戸)の感染牛確認
スクレイピー : 1981年に我が国で初発。現在までに62頭(32戸)の感染羊確認
●我が国で確認されたBSE牛(32頭)の出生地(※図7)
●我が国のBSE感染牛(32頭の内訳)(※図8)
■JLTA 事務局から■ 家畜の飼養頭数は、
畜産統計など(品目別分類データの畜産-農水省 統計ページ)
をご参照下さい。
11.プリオン病研究センターの主な研究
- プリオンとは何か? その構造は? 生物学的性状の違い?
- 発病機構:なぜ、細胞/動物が死に至るのか?
どうして正常タンパク質が異常化するのか? 末梢から中枢神経へプリオン伝播の道筋?
- BSEの人へのリスク(種の壁)
- プリオンの不活化方法とそのモニタリング法
- プリオンの好感度検出法と生前診断法
12.プリオンの発病機構に関する研究
- BSEプリオンに感染する新たな細胞株を作出し、試験管内でのBSEプリオンの
増殖を調べることが可能となった
- 神経細胞死には、PrPCとPrPScの双方が関与。PrPScが存在しても、PrPCがなければ
神経細胞死は起こらない
- その他の細胞が関与しているのか?アストロサイト、ミクログリアの関与を含め、
神経変性機構は不明な点が多い。
13.高感度診断法の開発に向けた研究
- プリオンの試験管内増幅
- 無限増幅、増幅産物の感染性の証明
- 血液細胞を用いた早期診断
14.BSEプリオンの体内分布に関する研究
- BSEを含むプリオン病では、伝達性に一致して異常プリオンタンパク質(PrPSc)の
蓄積が認められる
- BSE野外感染例では、PrPScの蓄積または伝達性は、中枢神経系(CNS)及び
一部の末梢神経組織(PNS)に限局している
15.BSE感染牛の中枢神経系におけるPrPScまたは感染性の推移 (※図9)
16.伝達性またはIHCによるPrPSc検出 (※図10)
- 検査で陰性の牛の場合も、BSE病原体が蓄積する危険性のある部位(脳、脊髄など)は
人の食用から除外されている。
17.BSE感染牛のプリオン分布:特定危険部位とPrPScが検出されたその他の部位 (※図11)
- BSEプリオンの伝達性が疑われる組織または伝達性が証明された組織は、特定危険部位(SRM)
として区別され、人の食用から除外される
- SRM除去だけでは、BSE感染牛(中枢神経系でPrPSc陽性牛)の全ての伝達性を
排除することはできない
- 末梢神経でのPrPSc陽性は中枢神経系でのPrPScの蓄積の前か後か?
- 末梢組織でのBSE感染牛リスクを考える上で重要な問題である
BSEプリオン牛の体内での動態を調べる必要がある +
生存中の牛のBSEの感染の有無を調べる方法はない = 牛を使った実験が必要
18.中枢神経系と末梢神経でのPrPSc陽転時期を明らかにする (※図12,図13)
- SRM除去のみでは,感染牛からのBSEリスクを完全に排除することはできない
- 抹消組織でのPrPSc蓄積は,中枢神経組織での陽転と同時またはそれ以降に認められる
- 閂部のBSE検査ならびにBSE陽性牛の処分により,末梢のBSEプリオンのリスクは回避できる
★ BSE検査は,食の安全に貢献
● しかし,肉骨粉と一緒に消化管から取り込まれたBSEプリオンが, どのような経路で中枢神経系に至るかは不明
19.実験感染牛の詳細な検討のため,国内での感染実験の実施
- BSE未発生国であるオーストラリアから試験牛を輸入
- 2004年8月より経口感染実験を開始。現在,接種後2年半経過
- まだ異常は認められておらず,経時的なBSEプリオンの検出を継続中
20.PrPScの体内での分布は動物種,プリオン株により異なる
- BSE感染牛でのPrPScの蓄積は,脳など中枢神経系に限局している
- その他の実験動物ではこの病態は再現できない
- BSEのリスクを明らかにするためには,牛でのBSEプリオンの動態を明らかにすることが必要
★ BSEの牛についての知見を集めることが必要
21.新たなプリオン病の出現
- 1.非定型BSE
-
ウエスタンブロットのパターンの異なるPrPSc
12カ国で確認(日本,イタリア,ドイツ,フランス,オランダ,米国,ベルギー,スウェーデン,
デンマーク,ポーランド,スイス,カナダ)
少なくとも2種類以上に分類される(非定型は単一ではない)
- 2.非定型スクレイピー
-
PK抵抗性の弱いPrPScが蓄積
12KDaのバンドを含む少なくとも5種類のバンドパターン
スクレイピー抵抗性遺伝子型の羊で確認
PrPScの蓄積部位も従来のスクレイピーとは異なる(小脳での蓄積が顕著)
臨床症状も明確でない(食肉処理場での検査で確認されるケースが多い)
22.非定型BSEの原因(仮説)
- BSEプリオンの性状変化
- スクレイピーの牛への感染
- 弧発性BSE
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(※図1)
(※図2)
(※図3)
(※図4)
(※図5)
(※図6)
(※図7)
(※図8)
(※図9)
(※図10)
(※図11)
(※図12)
(※図13)
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- ■JLTA 事務局から■
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プリオン病研究センターは、
動物衛生研究所WEBサイト
にて各種情報を公開しています。
BSEについては、
疾病情報-牛海綿状脳症(動物衛生研究所)にて詳細情報を公開しています。