2011/ 3/29 更新

平成22年度 家畜輸出入に関するセミナー

 平成23年3月10日(木)、「平成22年度 家畜輸出入に関するセミナー」を開催しました。


開催にあたって
  昨年の宮崎県における口蹄疫の発生は、畜産界はもとより、地域社会・経済に深刻な打撃を及ぼしました。 家畜伝染病予防法の改正作業が進められるとともに、 韓国で拡大が続いている口蹄疫の我が国への侵入防止対策と高病原性鳥インフルエンザ(H5N1) の発生予防・まん延防止対策の強化が図れています。
  家畜のアニマルウェルフェア(「快適性に配慮した家畜の飼養管理」と定義される。)については、 快適な環境で飼養さる家畜から安全・安心な畜産物が供給され、 このことが我が国畜産の発展につながると考えられています。
  一層進展する国際化の中で、我が国の経済、とりわけ農業・畜産はどうなるのか、 どうあるべきなのかを考えることは避けて通ることができない今日的かつ国民的課題と言えます。
  協議会では、会員の畜産及び家畜衛生・公衆衛生に対する知識の向上と家畜輸出入の円滑化を図るとともに、 会員以外の皆様に対するこれらの普及啓発のため、家畜輸出入に関するセミナーを開催してきています。 上述した三つをテーマとした今回のセミナーが皆様の業務の推進に大きく貢献することを願っております。
平成23年3月   社団法人 日本家畜輸出入協議会
理事長 中塚 眞五


高橋 氏

「国内外における家畜伝染病の発生状況と水際検疫の強化」

農林水産省消費・安全局動物衛生課 課長補佐 高橋周子氏

■口蹄疫を巡る最近の状況
・口蹄疫とは。
・韓国での発生状況。日本国内の生産者への情報提供。
■宮崎の口蹄疫発生と防疫措置
・昨年の発生及び対応状況。
・日本で初めて行なわれた緊急ワクチン接種。
・口蹄疫が発生した場合の防疫措置。発生農場での防疫/消毒作業。
■高病原性鳥インフルエンザの発生
・高病原性鳥インフルエンザとは。
・日本及び世界における高病原性鳥インフルエンザの確認状況。
・韓国における高病原性鳥インフルエンザの発生状況。
・日本の高病原性鳥インフルエンザ対策。
■水際検疫の強化
・空港における広報/周知活動(アナウンス、ポスター等による注意喚起)、靴底消毒、手荷物検査。
・港における車両消毒。
■今後の改善方向
・口蹄疫対策検証委員会の報告。
・進入防止対策の強化。農場における衛生管理の徹底。早期の発見/通報。防疫措置の準備。
・家伝法改正のポイント。
JLTA 事務局から
農林水産省は、 農林水産省WEBサイトの消費・安全ページ にて、家畜衛生に関する情報を公開しています。
また、動物検疫所は 動物検疫所WEBサイト にて、家畜伝染病予防法等の各種情報を公開しています。

菅谷 氏

「アニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の飼養管理指針」

農林水産省生産局畜産振興課 課長補佐 菅谷公平氏

■産業動物における「アニマルウェルフェア」とは?
■"ANIMAL WELFARE" をめぐる海外の動きについて
(1)EU諸国
(2)米国・カナダ
(3)OIE(国際獣疫事務局)
■動物愛護管理法(我が国の「動物の愛護及び管理に関する法律」)
・「動物の愛護及び管理に関する法律」(昭和48年10月1日) の目的や基本原則。
・「産業動物の飼養及び保管に関する基準」(昭和62年10月9日) に示される産業動物への配慮に関する基準。
■アニマルウェルフェアについての農林水産省の取り組み
・快適性に配慮した家畜の飼養管理に関する勉強会(平成18年度)
・アニマルウェルフェアに対応した家畜の飼養管理に関する検討会(事業実施期間は平成19年から22年)
■アニマルウェルフェアの考え方に対応した「採卵鶏」の飼養管理指針について
・一般原則、管理方法、栄養、鶏舎、飼養方法/構造/飼養スペース、鶏舎の環境。
■アニマルウェルフェアの考え方に対応した「豚」の飼養管理指針について
・管理方法、栄養、豚舎、飼養方法/構造/飼養スペース、豚舎の環境。
■アニマルウェルフェアの考え方に対応した「ブロイラー」の飼養管理指針について
・管理方法、栄養、鶏舎、飼養方法/構造/飼養スペース、鶏舎の環境。
■アニマルウェルフェアの考え方に対応した「乳用牛」の飼養管理指針について
・管理方法、栄養、牛舎の環境。
■日本の生産者は、これまでアニマルウェルフェアに配慮してこなかったのか?
・大多数の生産者において、家畜は大切に飼われてきた。
・飼養管理指針の普及により、今後さらに家畜環境の快適性に配慮した飼養管理が期待されている。
JLTA 事務局から
環境省は、 環境省WEBサイト にて、動物愛護管理法に関する各種情報を公開しています。

鈴木 氏

「最近の国際化の動きと我が国の畜産について」

東京大学大学院農学生命科学研究科 教授 鈴木宣弘氏

■はじめに
 日本が議長国を務める APEC (アジア太平洋経済協力機構) 横浜会合の開催に合わせて、TPP (環太平洋戦略的経済連携協定) への日本の参加問題が大きな争点としてにわかに浮上した。日本が TPP に参加することになれば、 これまでアジアに重点をおいて日本が進めてきた柔軟性ある FTA/EPA (自由貿易協定/経済連携協定) の段階的拡張という方向性は一気にくつがえされ、産業構造、雇用、そして国民生活全体に劇的な変化がもたらされることは間違いない。
■FTA の本質
■「例外なし」が優れたFTAだというのは間違い
■これまでの FTA に障害になったものは何か
■「農業保護 v.s. 国益」ではない
■TPP で重要品目の例外化は認められるか
■戸別所得補償のための財政支出額試算
■外部効果も含めた TPP 影響評価を
■食料は国民の命を守る戦略物資
■食料危機は米国が作り出した「人災」
■日本も米国の食料戦略の「標的」
■農産物輸出国の手厚い農業保護
■まず ASEAN プラス3からアジア圏拡大へ
■本当に「強い酪農・畜産」を目指して